ジャーナリズム×人材育成

「良い記事が書ける能力とは」。記者の人材開発について研究しています。

新聞を使って文章力を伸ばすには、コラムよりもベタ記事!?

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◆コラムの書き写しは効果があるのか?◆

 

文章力を高めるには、どうしたらいいの?という質問を受けるときがあります。

 

細かい文章のスキルはいろいろあるのですが、まずは、大前提として、文章は「情報を削る作業である」という認識を持つことが大切かと思います。書くことがはっきりしていないのに、よい内容の文章を書く事は難しいでしょう。書きたい事についての情報を、的確に集める事からスタートすべきかと思います。

 

新聞記事は、実際に取材して聞いてきた情報が10とすれば、大体2〜3の内容しか書かれていないことが多いです。「おいしい」情報をぎゅっと凝縮して書かれているわけです。

 

新聞を使った文章のトレーニングとしては、よく一面の下にあるコラムを書き写しましょうということが言われます。コラムというのは、朝日新聞であれば「天声人語」、産經新聞であれば「産経抄」、毎日新聞であれば「余録」、読売新聞であれば「編集手帳」、日経新聞であれば「春秋」というタイトルがつけられている欄です。

 

これらのコラム欄は、新聞社で最も筆力のある「名文家」と言われる記者が書いています。少ない文字数のなかで、日々、起こる出来事を、文学や別の事象を引き合いに出しながら、うまくオチをつける極めて優れた文章です。

 

ちなみに、読売新聞の「編集手帳」は、段落を分けるときに改行するスペースがないため、ひし形(◆)で段落を変えています。ひし形とひし形の間の中心で折り曲げると、ひし形がぴったりと重なり合うときは、ある一人の記者が書いています。署名としての役割を果たしているんですね。

 

さて、これらのコラムを書き写す事で、文章が本当にうまくなるのでしょうか。

 

私の意見としては、コラムを書き写すのは、

 

プロ野球の投手がフォークボールを投げるのを見て、「さぁ、あなたも同じフォームを真似して、フォークボールを投げてみましょう」

 

と言われているようなものだと思っています。

 

確かに、文章の「本物」に触れ、実際に書く事で、より深く味わうことができるため、全く意味がないとは思いません。また、ある程度文章の構造が理解でき、文章力が備わっている人なら、練習になるかもしれません。

 

しかし、そうでない人であれば、もっと練習になる記事が、ほかにあるのではと思います。

 

その記事とは、地域面のベタ記事です。

 

◆効果的な練習法は、ベタ記事を分解してみること◆

 

ベタ記事というのは、見出しと本文が1段のみで簡潔している短い記事です。トップ記事であれば、見出しを3段くらい使って大きく扱いますが、それほどニュース性がない場合は、ベタ記事になります。

 

さらに、地域面のベタ記事は、主に駆け出し記者が書いています。

 

つまり、文章力が一人前になりきっていない記者が、必死で書いている記事なのです。

 

余計な工夫を凝らす力もスペースもない。だからこそ、必要不可欠な情報ばかりがぎっしりと詰まっています。

 

例えば、事件の記事であれば、

 

 女性の自転車の前かごからバッグを盗んだとして、○○署は9日、東京都○区、無職○○容疑者(25)を強盗容疑で逮捕した。○○容疑者は「覚えがない」と容疑を否認している。

 発表によると、○容疑者は、9日午後6時25分頃、○区の路上で、同区の主婦(50)が乗っていた自転車の前かごから、財布などが入ったバッグ(3万円相当)を奪った疑い。

 

といった記事があった場合、この記事を成立させるために、聞かなければいけないのは、

 

  • 逮捕はどこの署がした?
  • 誰を(住所、名前、職業、年齢、生年月日)?
  • いつ逮捕?
  • 容疑名は?
  • 身柄は容疑者でいいのか?
  • 通常逮捕?
  • 容疑を認めている?否認している?
  • 容疑者は何と言っている?
  • 逮捕事実は?(誰が、日時、どこで、何を、どのように奪ったか、なぜ奪ったか)
  • 被害品は(バッグの中身も)?
  • 被害金額は?
  • 被害者について(住所、職業、年齢、生年月日)?

 

という情報が最低限、必要です。

 

ほかにも、実際に聞くときは、

 

  • 被害者はけがをしているのか?
  • 余罪はありそうか?
  • どうやって逮捕されたか?
  • 近隣で同様の被害はあるのか?
  • 主婦はどこからどこへ向かっていたのか?
  • 容疑者は有名人や公人ではないか?
  • 同じ手口の被害は増えているのか?

 

 

などといったことも必要かもしれません。

 

 

ベタ記事を書くために、聞くべき必要な情報は何かということを、記事を分解してリストアップしてみる。さらに、自分だったら、追加で何を聞いてみるだろうかと考えてみると、的確な情報を集めるスキルが上がっていくように思います。また、記事を分解することで、文章全体の構造も理解できるようになります。

 

本日は、新聞を活用した文章力トレーニングについて考えてみました。いざ書きたい事が思い浮かんでも、文章を書くにあたって、どういう情報が必要かわからないと、深い文章は書けません。記事を分解しながら、記者がどういう取材をして記事を書いたのか、疑似体験してみると、うまく情報が集められるようになるかもしれませんね。

 

お元気で。