ジャーナリズム×人材育成

「良い記事が書ける能力とは」。記者の人材開発について研究しています。

記者から取材されて気付いたこと

f:id:kaz-journal:20150524014616j:plain

◆初めて取材を「受けた」◆

先日、ある雑誌の記者から取材を受けました。いつも取材を「する側」で、「される側」に立つのは初めてだったので、どういう感じなのだろうと、期待と不安が入り交じりながら臨みました。取材テーマは詳しく触れませんが、自らのキャリアなどについて語りました。

 

取材されてみて、一番大きな気付きは、取材された側は予想以上に大きな不安を抱えるということでした。

 

取材を終えてまず初めに思うのは、「正しく伝わったのか、思っていることを伝えきれたのか」という疑問です。これは、取材を承諾した側も「いい記事にしたい」と思っている故の感情だと思うのです。

 

「いい記事を書きたい」と思っている記者に、「いい記事を書いてほしい」と思うから、「きちんと情報を伝えたい」けど、「本当にきちんと伝わったのかな」と、思っていた以上に不安になりました。

 

◆取材対象者の不安を和らげる3つのポイント◆

そこで、記者の立場から考えてみます。そういった取材される側の不安を少しでも和らげるためにできることは、この3つではないかなと思います。

 

1:前もって、記事の方向性と質問する大まかな内容を伝える

まずアポを取る際に、電話でもメールでも、どういう企画で、どんな趣旨で聞くのかを、アウトプットのイメージと合わせて伝える。これは、取材対象者に前もって、話を思い出しておいてもらう効果もあると思います。

当然、当日に話を聞いた中で、聞く内容を変更することもありますが、少なくとも実名か匿名か、写真撮影の有無、所要時間、単独で載るのか誰かと抱き合わせで載るのか、掲載予定日はいつかなど、アウトプットイメージが明確であればあるほど、取材対象者は準備しやすいように思います。

 

2:取材中は「こういうことですよね」と、都度、聞いた内容の確認をする

取材対象者は、基本、聞かれたことを答えるというスタンスです。記者は記事を想定しながら、企画の趣旨に合った部分や面白みを中心に深く掘り下げます。だから、取材対象者が頭で整理している通りに聞かない場合があります。

取材対象者は、なるべく記事なりそうな面白い部分を自分で想像しながら、提供しようとしますが、蛇足になるのではと、躊躇しているところがあります。そういう部分を取りこぼさないためにも、記者は、ある程度聞けたと思ったタイミングで、時系列などを整理しつつ、「こういうことですよね」と事実確認することが好ましいと思います。取材対象者の意図と異なる記事にならないようになることと、語りきっていない内容を補足してもらえるメリットがあります。あくまでも「時間の許す範囲で」ということですが。

 

3:激しく同意する

昔、よく上司から「カメレオンになれ」と言われました。自分の相性のいい相手だけ話が聞けても、プロではないと。相性の悪い相手でも、自分の取材スタイルを柔軟に変えながら聞けるようになれと言われました。これについては少し思うところはありますが、あながち全て間違っているというわけでもないように思います。

まずは、取材対象者に「この人は自分のことを理解してくれる人だ」と思ってもらうことが極めて重要だと思いました。心理的安全を担保しないと、本音が語りにくい。記事にするにあたって、「なぜ」と繰り返し尋ねるのは、記者の宿命だとしても、問い詰めるように聞くのは、取材対象者を身構えさせてしまうかもしれない。

大学院の研究合宿で知り合ったフリーライターの方が、「大きく共感することが取材のコツだ」というようなことをおっしゃっていましたが、取材されてみてこれはかなり大事だと思いました。取材の目的は議論することではないので、仮に自分と意見が異なる人であったとしても、共感する。この考え方はビジネスで言う「コーチング」に近いのかもしれません。権力組織の取材など、問いつめないといけない取材については別問題ですけどね。

 

以上です。

 

◆一期一会を真剣勝負で◆

 今回は、取材される側の視点から、取材手法について考えてみました。私は以上のポイントは何気なく行っていましたが、すごく重要なことなんだなと痛感しました。もう何千人と取材してきて、「この期に及んで……」感はありますが^^; 取材する記者は、「日々の仕事の一つ」。しかし、取材される側は「人生で一度」かもしれない。記者は取材対象者に大きな心的負担をかけていることを自覚しながら、感謝の念を持ちつつ、できるだけ毎度の一期一会の空間を真剣勝負で臨みたいものです。自戒をこめて、そう思います。

 

今回の取材では、記者さんは和やかな雰囲気を作ってくださり、すごく心地よく話をさせていただきました。私なんぞの拙い話を熱心に聞いてくださり、心から感謝したいと思います。少しでも助けになっていればいいのですが……。

 

お元気で。